やっぱり、リーファーワインは違う。そう思えるのはなぜ?

 
フランスとかイタリアなどの原産国で飲むワインはおいしいですよね。
その鮮度をそこなわないよう、温度管理されたリーファーコンテナで海上輸送されてきたのがリーファーワイン。だから、赤道直下を通ってくるワインも味わいを保ったまま、おいしくいただけるのです。
 

 ワインはいわば野菜や果物と同じ農産物なので、高温にさらされたり、逆に保管温度が低くすぎたりすると、本来持っている色や香味が失われ、色の劣化はもとより、不快な香りや味に変化するからです。
 よくコンディションが良いとか、悪いとかプロの方はいいますが、それはワインの状態が良いか、傷んでいるかを表現しているのです。
 

 ワインは使用されるブドウ品種や醸造法、さらには早飲みタイプ・熟成タイプなど、それぞれが固有の個性をもっています。それらの個性が産地の風味そのままで味わえれば、そのワインはコンディションの良いワインということになります。
 いずれも鮮度の良さと、バランスのとれたすっきりとした味わいを感じます。また、料理のおいしさを最後までそこなわないのが良いワインです。
 

[コンディションの悪いワインの特徴]
 

 温度ダメージを受けたワインは、まず香りに不快感を感じることが多いようです。色合いでは褐変(かっぺん)といいますが、赤ワインでは濁りとともにわずかに褐色を感じます。白ワインでは酸化による劣化が顕著にあらわれます。
 口にふくむと香味・酸味・タンニンの渋みなどのバランスが悪く、歯茎にまとわりつくような不快感があったり、不快な香り、苦い味がします。飲みすすむにしたがって不快感はまし、料理もまずく感じられます。
 多くの日本人がワインを飲むようになったのはそう昔のことではありません。ここ20〜30年でしょうか。また種類がたくさんあって、どれがコンディションの良いワインなのか、分りにくいと思います。例えばご家庭で召し上がる御飯や、味噌汁は毎日のように食されているので、ちょっと違ってもその差はすぐ分かると思います。このように、比較の基準ができていると分かりやすいのですが、ワインの場合今までなじみが少なかっただけに、その違いに気づくことは難しいのかもしれません。
 しかし、コンディションの良いワインと悪いワインを同時に比べてみると、両者の酒質には明確な違いがあることが容易にわかります。その違いは『エノログと話そう「ワインの科学」』の連載でも取り上げますのでご覧ください。
 

 これはなかなか難しいですね。
 急激な温度変化に遭遇したワインは吹きこぼれすることがありますので、瓶口やボトル、ラベルに液漏れの跡があるものは避けた方がいいかもしれません。ワインが酸化している危険性があります。
 また、コルク栓の場合、キャップシールをクルクル回す人がいます。キャップシールは本来糊付されていないため、ワインが液漏れしていない限り、回ることが多いからです。しかしこれも絶対というわけではありません。ボトルに密着したキャップシールもありますので、お店で回しすぎて切れてしまうようなことがないよう、ご注意を。
 

  1. グラスにゆっくり注ぎ、静かに鼻腔を近づけます。このときグラスは回さないようにして香りを 嗅ぎ分けます。さまざまな香り成分を感じると思いますが、不快な成分はないかを判断します。

  2. グラスを回し、空気とふれさせ、香りがどう変化したかを判断します。

  3. グラスを斜めにし、白い布や紙などにかざし、グラスと液体の接点あたりを注目します。きれいなグラデーションではなく、透明な部分の幅が広いワインは酸化している可能性があります。

  4. 口にふくみ、舌全体にワインが行き渡るようにし、とくに舌の両側の端に苦みを感じるようなら、ダメージを受けている可能性が大きいといえます。

  5. 飲み干してみて、「口中香」といわれる口腔から鼻に抜ける香りのなかに、不快な臭いがないかを判断します。

  6. 最初の一杯目を真剣にテイスティングしたら、さあ、あとは同席の方と会話と食事を楽しみましょう!

 

 ワインは20℃を超えると緩やかに、25℃を超えると急激に劣化し始めます。また7℃以下になるとワインの成分である酒石酸が結晶化し、風味を損ないます。そこで、安全な温度帯として当会は12℃〜18℃で保管管理されることをお奨めしています。
 また保管温度が上がったり、下がったり大きく変化すると、ワインは液体ですのでその度に膨張、収縮を繰り返し、コルクとボトルの隙間から空気が出入りして酸化することがあります。ワインはなるべく一定の温度で保管されることが望ましいのです。
 

 スクリューキャップのワインは、以前から、日常ワインを中心に市場に見られました。現在はコルク栓の需要が増大していることや、質の良いコルクの確保が難しいこともあって、密閉性が高く窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガスを用いた充填にも適応し、酸化防止の効果が高いスクリューキャップを使用したワインが増えています。
 しかし高温、低温劣化は、スクリューキャップのワインでも、コルク栓のワインと同様に発生しますので、温度管理は重要です。 
 

 日本には世界中からワインが輸入されています。そのほとんどが赤道直下を通って輸入されています。温度変化に影響を受けやすいのがワインです。そのために「リーファーコンテナ」で15℃ぐらいの定温で輸入することが多くなってきました。定温輸送が必要な医薬品、精密機械、生花、青果などもリーファーコンテナを使用しています。(一社)リーファーワイン協会の名称の由来ともなっています。
 それではリーファーコンテナではなく、温度コントロールされていないドライコンテナは一体何度くらいになるのでしょう。コンテナは船の甲板の上と、吃水線以下の船倉に蔵置されますが、 温度変化の実際は、欧州航路の測定値をご参照ください。
 

資料:赤道付近航行中のドライコンテナ内部温度変化
調査: 株式会社MTI 秘術戦略グループ(日本郵船グループ)
 

 アンダーデッキ内は甲板上に比べ緩やかな温度変化ですが、温度帯は25℃〜30℃ぐらいで、残念ながらワインが劣化する温度帯です。さらに、このグラフで見逃してはいけないのが、コンテナヤードでの保管中の温度です。甲板上の温度とほとんど変わらないのです。
 ドライコンテナに比べ、リーファーコンテナはかなり割高です。それでもRWAがリーファーコンテナをお奨めするのは、鮮度にこだわる日本人のニーズに応えるため、そして増え続ける外国人観光客に残念な思いを持ってもらいたくないからです。
 

 これは生産地から日本までの海上輸送をリーファーコンテナ(定温コンテナ)で運びましたという表示です。表示に関しての規制は特に定められておりませんので、それが事実であるか確かめることはできません。ある程度目安にはなりますが、コンディションそのものを保証するものではありません。そのワインが日本に荷揚げ後、どのような環境やプロセスを 経て流通し消費者の方の手元に届いたのか判断できないからです。
 ワインを選ぶ際は、コンディションを見極める人材がいる、信頼できるレストランやワインショップを選ぶことが大事です。
 

 ご自宅でワインを保管する場合も、12〜18℃で保管するのが理想です。冷蔵庫ではなくワインセラーでの保管がおすすめですが、購入して数日中に飲むなら、なるべく涼しい場所で日の当たらないところに保管しておけば大丈夫です。例えばキッチンの床下収納とか。そして飲む前に冷蔵庫で適温にして楽しみましょう。
 ただし、冷蔵庫に入れっぱなしは止めましょう。低温劣化により風味が悪くなります。
 

 近年、醸造技術の向上はめざましく、 蔵元やネゴシアン等で瓶詰めされたワインはそれぞれに味わいがあり、おいしいものです。ただ、その後の輸送、保管、販売などのプロセスで、その扱い方により品質劣化を起こしやすいのもワインなのです。
 だからこそ、信頼のおけるインポーター(輸入業者)、レストラン、ワインショップを選ぶことが大事になってきます。同時に、販売してくれた人を選ぶことも大事です。自分が飲んだ感想を言い合える相手をつくることで、次回からのワイン選びの精度が格段に向上することは間違いありません。
 

  1.  何よりも傷んだワインをお客様に提供しないことを心がけましょう。

  2. 目視による頻繁なチェックと、試飲による検品マニュアル化、定期的かつ継続的な研修などで、劣化ワインの販売を未然に防ぐ努力がリピーターを増やし、拡販につながると思われます。当初はクレームの内容を主体とした経験と知識のあるプロによるケーススタディなどを集積し、スタッフの教育、育成を進めましょう。

  3. ワインは品質管理に力を入れている、信頼できる酒販店やインポーターから仕入れましょう。

  4. 営業時間外や、店内外との温度差の大きい場所での蔵置は避けましょう。温度変化の大きい日本の気候では、ワインセラーは必需品とお考えください。

  5. 仕入れ時にコンディションの良否を判定できる力を磨きましょう。

 
※  RWAではコンディション判定講習会を開催しております。ぜひご参加ください。また、ホームページの「リーファーワイン最前線」でワインショップ会員、飲食店会員の品質管理向上に向けた取組みを取り上げています。ご参考になさってください。
 

  1.  定温設備(低温ではありません)を持つ、年間通して一定の温度で保管できる倉庫を選びましょう。

  2. ワインは入出庫時にバラで扱うことが多い商品です。商品知識を持ったスタッフのいる倉庫を選びましょう。

  3. 保税倉庫は輸入されたワインが初めて荷揚げされるところです。

    商品をチェックをする重要な役割を担っています。品質管理の知識を持っているか確認しましょう。

  4. 入出荷の際、気温の高い場所、あるいは気温の低い場所にワインを平気で置いておくような倉庫は要注意です。せっかく定温倉庫に保管しても何にもなりませんので。